第8話 のろし
どれだけ歩いただろう。何度も休憩を繰り返し、上へ、上へと昇っていく。 フラウが魔力切れを起こすこともなく、異形の生物に襲われることもなく、そういう意味でとても順調に僕らは穴を上り続けている。 途中…
どれだけ歩いただろう。何度も休憩を繰り返し、上へ、上へと昇っていく。 フラウが魔力切れを起こすこともなく、異形の生物に襲われることもなく、そういう意味でとても順調に僕らは穴を上り続けている。 途中…
くたくたになるまで歩いたから、たぶんもう外は夜になっているに違いなかった。僕らの時計は何かの力でくるってしまったのだろうか、それぞれ別の時間をさしていた。探索に入るとき時間を合わせたにもかかわらず、…
予想していた通りに、フラウの脚は遅かった。そんなに急いでもいない偵察任務なのに、僕とフラウはみんなから遅れに遅れた。 まだ乙女という年にすらなっていないフラウを大人と一緒の速さで歩かせるのは無理だ…
フラウが来てから、僕の生活はちょっと明るくなった。 彼女はひ弱だったけれど、一生懸命僕の仕事を手伝ってくれた。 そんな姿を見て元は胡散臭い目で見ていた連中も、こっそり彼女を支援するようになった。…
フラウは真正の“お嬢様”だった。 周りに世話をされることに慣れていた彼女は掃除も洗濯も料理もしたことがないようだった。僕は彼女につきっきりでいろいろなことを教えた。 それだけで、夜の自由時間までつぶ…
いつものことだが眠りは浅く、目を覚ましてもまだ夢を見ているような感覚だった。 まだ、向こうの“僕”が必死で暗記していたカガクホウテイシキが目の裏にちらついている。 試験だからといって夜遅くまで勉強…
「アーク、新入りが来る。お前が面倒を見ろ」 クリフ隊長に呼び出されるときはろくな用ではない。それがここにきて真っ先に僕が学んだことだった。 この星の一族が治める帝国の、どん詰まりの、黒翼連中くらい…
「フランカ・セレニティ・サン・レイノス・レオン、お前との婚約を破棄し、皇妃候補の地位をはく奪する」 壇上で光り輝く翼を広げた王子は人々の目を集めていた。 光の王子、その名前にふさわしく、その場にい…