だれの息子でもない

久しぶりに神林先生の本を読んだ。

 近未来の日本、一家に一台ミサイル(オーデン改)とプルトニウム発電機が備えられているちょっと先に未来。そこでは、ネット上に自分の分身となるアバターを作成してメール処理や様々な雑事が行える社会になっていた。

 主人公が務めているのは電子文書課、ネット上の第二人格としてネット内部を管理しているネットアバターに死亡宣告する仕事だ。現在のネット上のアカウントを閉じる仕事を行っている。

ある時、配備されているオーデン改の不正アクセスが報告される。調べてみると主人公の個人認証データがどこにも存在しない顔に書き換えられていた。それは、死んだ父親の顔だった。

 と、まぁ、そこから祖父、父親、母親、と主人公がネットアバターといわれるネット上の人工知能が作り出した人格も交えてかなりシュールな物語が展開される。

 この中に出てくるのはネットの中の人格ネットアバター、これが別人格として出てきたり、死んでもなおネットの中に残っていたり。

 ネットの中に取り残される話はSAOをはじめとしてたくさんあるけれど、現実として互換を伴ったネット社会への移住はかなり難しいと思う。2023年というすぐそこの未来では実験はしていても実現はどうか疑わしい。でもこのネットアバターは意外に早く実現しそうな手触りがある。

 今でもネット環境は日進月歩で進化していて、数年前までは必死にメモしていたパスの類はいまではグーグル先生とか他のソフトとかで記憶してくれている。データも、どんどんクラウド化が進み、昔はソフトといってパッケージで買ってきていたソフトも今ではアプリでダウンロードが普通だ。

 アマゾン先生や楽天市場もこちらの好みはばっちり押さえていて買いたくなるような広告をせっせと送ってくる。

 彼らの把握している”私”というものが、どこまで実在の”私”に近いのか不明だが、細かいデータの蓄積で趣味趣向や性格が把握されていることは間違いないのだ。

 大容量の5G通信、とんで6Gまで一気に行くぞ、といううわさもちらりと聞いた。そこまで行ってしまうとネットの中にも分身を置くということが現実味を帯びてくるような気がする。

 例えばネットの買い物、例えば、暗証番号の記憶。オリジナルが記憶していなくてもすでにネットの中では代わりのソフトが代替してくれている。そういう私の断片の積み重ねであるネットアバター、意外といけるんじゃないか。

 SIRIみたいな人工無能もいずれはもう一人の自分として、ネットの中の自分を証明するカギとして、実用化できるのではないかな。                             

 携帯といえばスマホが当たり前になったように、いつか気が付くと当たり前のようにネットアバターがそばにいて、現実を侵食していることもあるかもしれない。

 あと一つ、一家に一台対空ミサイル……なかなかいいアイデアかもしれない。日本全国どこもかしこも基地化計画。これなら、一部の地域に負担をかけなくてもいいし、東京だろうと沖縄だろうと、人の住まうところに等しく守りを固めることになる。早く小型で安価な対空ミサイルを開発しよう。マイナンバーと自分認証を組み合わせたネットアバターの開発も同時に行えば、できそうな気がする。

神林長平 「誰の息子でもない」 講談社

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